高度IT人材育成への提言

2007年に出版された本読んだのでメモ.著者はNTTデータの偉い人.

問題

今のモノづくりではソフトウェアは欠かせない.例えば携帯電話のソースコードは500万行,DVDレコーダーは100万行,薄型テレビも60万行.*1 また保険などのサービスにおいてもソフトウェアによって大きくサービスは左右される.

アメリカの企業はOSなどのプラットフォームを持ち,インドや中国は人件費が安い.

(日本だけに限らず)コンピュータサイエンスの専攻を卒業した人には「ビジネススキル」「コミュニケーション能力」「ビームワーク力」が足りない.アメリカのCIO大学と呼ばれる制度では産学連携によるプロジェクトベースの授業やインターンシップによりこれらの力をつけるカリキュラムが組まれている.ジョージ・ワシントン大学カーネギーメロン大学がこれにあたり,後者では企業エクゼクティブに対するコースが置かれている.

解決

次のような「産業界が求める人物像」を排出する大学をつくろう

  • プロジェクトマネージャ
  • 組み込みソフト,ソフトウェアエンジニア,ITアーキテクト
  • ユーザー企業におけるシステム開発要求などを担う人
  • セキュリティ人材
  • Cief Information Officer

修了時のスキル

大学による教育だけでこれらの力をつけるのは無理.情報理工学系の学生は在学中に次のようなスキルを持つべき

ソフトウェア, システムの基礎, 応用の知識・スキル
    • 複数のプログラミング言語を使いこなし,1万行以上のプログラムをかける
    • UMLやDFD, ERDなどのダイアグラミング技法を使って,簡単なシステムの要求分析や設計ができる
    • ハードウェア,ミドルウェア,ネットワーク,データベース,OSなどのシステム開発にかかる要素技術の基本概念を理解し,活用あるいは基本的な機能を設計開発できる
    • 作業計画,手順を理解し,利活用できる
    • 品質,コスト,工程,リスクなどのシステム開発の開発に関わる知識を持ち,その手順,意義を理解し,利活用できる
    • コンピュータ上のシミュレーションだけでなく,実作業をした経験があり,経験の重要さを認識している
    • 要求分析,設計,プログラミング,テストを含むシステム開発のプロセスをひと通り経験し,各プロセスを実施可能なスキルを身につけている
    • 実践的なプロジェクトマネジメントの知識・スキルを持ち,小規模のプロジェクト・マネジメントができる
    • 最先端の応用技術を知り,情報工学基礎との関連を理解することができる
学際的領域の知識・スキル

社会経済全般のIT化や技術の急速な進展を見据えて経営,バイオ,ナノテク,機械などの融合領域にも適応可能なスキル,マネジメントなどの要請が必要であり,以下の項目が挙げられる

  • 経営,会計,法律,経済,公共政策,知的財産,などの人文科学系の知識・スキル
  • 機械,電気,通信,材料,構造,数学,物理,宇宙工学などの光学,理学系の基礎的な知識・スキル
  • バイオ,ナノテクノロジーなどの最先端技術の知識・スキル

(P.176「拠点大学院の修了学生に期待する知識・スキルのレベル」より)


後半は北海道大学筑波大学で行われた高度IT人材育成の取り組みを紹介している.

*1:Windows 3.1は300万行,Linux(RedHat 2002)は3000万行らしい